東邦大学医学部医学科の将来構想に基づく人事考課について
わが国の私学、取り分け、私立医大を取り巻く環境は、少子化に起因する大学全入時代の到来、国の財政難による私学助成金の減額、医療費抑制政策による医療収益の減収などにより、今後益々厳しくなると予想される。また、大学全入時代到来ならびに入学定員増員による影響は、寄付金収入減少などの財政的圧迫のみならず、医学部志願者もしくは入学者の質の低下も懸念させる。さらに、平成16年度から導入されている新臨床研修制度は、無給医の解消に寄与したものの、結果として、医師の地域偏在化や診療科における医師の偏在化をもたらしたと同時に、基礎系教室に入室する医学部出身者の減少を招来した。これは医療形態の崩壊のみならず、生命科学研究や医学教育を滅ぼすことにつながりかねない状況を予測させる。
このような厳しい環境下、本学は「自然・生命・人間」という建学の精神を礎に、これまで努めてきたように、人に求められ、信頼され、感謝される医師、即ち、社会に大いに貢献し、世界に雄飛する「より良き臨床医」を育成、輩出するという使命を果たしていかねばならない。この使命を果たしていくためには、教育・研究・診療等についての業績評価と自己点検評価を踏まえて、教員が熱意と意欲と自覚を持って生き生きと職務を全うすることが求められる。さらには、医学の進展に寄与すると同時に、先ずは教職員が、そして在校生や卒業生が誇れる母校の確立と地域の医療・保健・福祉、ひいては社会の未来に大きく貢献すべく邁進しなければならない。
この度、東邦大学としてのグランドデザインが提示されたが、医学部ではこれを踏まえ、医学部医学科としての中期目標をここに策定、明示する。その目標の実現に向けて教職員が一丸となって奮闘努力することを期待したい。各教員には、この中期目標の実現に直結する個人目標を設定して頂き、これがどれくらい達成されたかを評価する人事考課システムを構築した。
東邦大学医学部医学科が未来永劫力強く生き残ることを目指し、また、教職員一人一人が将来への夢と希望と誇りを携え、充実感や達成感を実感できる人事考課システムとしたい。
中期目標
中期目標の期間:平成24年4月1日~平成29年3月31日
Ⅰ 建学の精神に基づく教育理念・目標の堅持
人間愛と豊かな人間性を携え、日本および国際社会で指導的活躍ができる「より良き臨床医」を育成、輩出する。
Ⅱ 認証評価機構による第三者評価に関する目標
大学基準協会などの第三者評価認証機関の定期的受審により、常時良好な評価を獲得する。
Ⅲ 教員組織の統合再編および教員評価に関する目標
1 講座・研究室を教育単位として統合し、機能的な教育・研究体系を完成する。3付属病院の位置付けとしては、大森病院が卒前・卒後教育の拠点をなし、大橋病院と佐倉病院は主に卒後教育を担当する。
2 教育・研究・診療に関する業績評価項目・基準を完成させ、教員評価を実施する。
Ⅳ 教育・研究に関する目標
1 教育に関する目標
(1)教員の意識変革、即ち、人材を育成することが第一義であることを肝に銘じる。
(2)学生が広い教養と深い専門性を身に付け、課題探求能力と問題解決能力を修得できるように支援する。また、これを達成しうる教育カリキュラムを模索していく。具体的には、テュートリアル教育、実習重視型教育、人間性教育に重点を置く。
(3)医師国家試験および共用試験の成績の高位安定化を目指し、修学支援センター等の積極的支援および学生への少人数もしくは個別的指導を強化していく。
(4)アドミッション・ポリシーを明確に定め、これを公表し、これに基づく入学試験選抜方法の改善、開発を図り、本学科が求める資質を有する人材を獲得する。
(5)新たな教育形態に対応する施設・設備等の改善に努める。教学環境の整備のみならず、生活環境の整備、改善による学生生活支援についても力を入れていく。
(6)公的な競争的資金の積極的獲得により、寄付金および学納金の削減を図る。
(7)学生による授業評価の充実を始めとして、教員の教育活動・成果について、自己点検・評価システム(教育業績評価)を完成させ、教育の質の向上および改善を図る。
2 研究に関する目標
(1)大学院学体系の再編、専門職大学院および臨床系専門医履修コース等を設定し、高度な専門職業人や研究者の育成を図る。
(2)研究の高度化や拠点化を目指し、研究組織の新設や総合研究部施設の計画的な整備、充実を図る。技術員(オペレーター)の適正配置とサービスを強化する。
(3)競争的研究資金、取り分け、文科省科研費の獲得に努める。
(4)学内研究資金およびスペースの重点配分を含む研究支援方法について検討する。
(5)附置研究所および研究支援センターの設置を計画する。
(6)産学協同研究や産官学連携を推進する。
Ⅴ 国際交流の促進に関する目標
1 国際センター組織の充実と財政的支援の確立を図る。
2 姉妹校協定の締結、共同研究、留学生の受け入れ等を通じ、教職員および学生間の交流を積極的に推進し、本医学科の実質的向上を伴う国際交流を目指す。
Ⅵ 付属病院の充実に関する目標
1 先端医療を取り入れた高度かつ高品質な医療を提供できる医療機関として機能していく。
2 医療安全管理が行き届き、健全な財務体制を有する病院を構築する。
3 患者サイドに立った優しい医療の実践を継続し、患者満足度の更なる向上を目指す。
4 診療の責任体制を明確にするとともに、積極的な情報公開および広報活動を行う。
5 前期研修プログラムおよび各診療科後期研修プログラムの充実(1年程の研究活動の導入等)と各診療科の積極的な広報に努める。
6 研修医、レジデント、シニア・レジデントの処遇を検討し、人材の定着、育成を図る。
7 (財)日本医療機能評価機構による継続的高評価を得る。
8 ISOを取得できる環境に配慮した病院を目指す。
9 3付属病院の老朽化を前提に、中・長期的な繰り回し工事計画を策定する。
Ⅶ 地域貢献の推進に関する目標
公開講座、ボランティア活動を推進する。
Ⅷ 教員考課制度の確立に関する目標
1 教員が明るく充実した職場環境の中で人材育成を含めてその職務を全うし、医学科の活性化に寄与することを目的として、人事考課制度を確立する。
Ⅸ 人材育成に関する目標
教員の質および能力の向上のために、教育開発室および研究基盤センター(未設置)が開発プログラムを策定し、人材育成を図るシステムを確立する。
東邦大学医学部医学科人事考課
1.人事考課制度の目的と概要
東邦大学医学部医学科人事考課制度は、本学教員が設定した教育、研究、診療、管理・運営及び社会活動の領域における目標の達成度等を勘案し、その業績、意欲・態度、能力を評価し、それぞれの有する能力を育成・活用することによって、教育、研究、診療等の活性化を図るとともに、教員自身のモチベーションを高めることを目的とする。
2.人事考課
人事考課は、5年間を1区切りとし、3年目と5年目に実施し、3年目は中間評価と位置づけ、5年目のそれは最終評価とし、顕賞などの処遇に反映させる。具体的考課は、教育、研究、診療、管理・運営および社会活動等の領域における「業績」「意欲・態度」「能力」の各考課項目に設定された要素について、考課者が目標の達成度等を勘案し、5段階で評価する。考課にあたっては、被考課者から提出された「目標シート」、「実績表」、「自己評価シート」等を参考にする。
3.考課要素
各領域における考課要素は、次の通りとする。4.人事考課各要素におけるウエイトづけ
各領域における業績、意欲・態度、能力について、以下のような重み付けを行う。5.考課者
考課者は、次の通りとする。6.考課対象期間
考課対象期間は次の通りとする。7.目標シートの記入について
被考課者は、各自「目標シート」を記入し、指定された期日までに第1次考課者へ提出する。
(1) シートには、原則、本学の中期目標に関連した自身の立場でなしうる重点目標を設定するとともに、設定した目標を達成するための創意工夫など具体的方法や達成しようとする程度(水準)などを記入する。なお、自己評価および第1次考課欄はシート提出時には記入せず考課時に記入する。
(2) シートの〔各領域における遂行上の配分〕欄には、教育、研究、診療、管理・運営、社会活動の各領域における遂行上の配分(配分率)を5%から50%(一般教育、基礎系教員の診療への配分は0%でも可とする)の範囲内で合計100%となるよう記入する。但し、教育への配分は30%以上、社会活動への配分は10%以内とすることが望ましい。
(3) 記入にあたっては、必ず第1次考課者等と面談する。
8.目標シートにおける概略評価の評価基準について
「目標シート」における自己評価、第1次考課の概略評価の評価基準は、次のとおりとする。
a 他の模範となる結果であった。
b 期待以上の結果であった。
c 目標は概ね達成され、実績は期待通りの結果であった。
d 結果はある程度評価できるが、不十分であった。
e 評価できる結果は得られなかった。
9.実績表の記入について
被考課者は、各自「実績表」を記入し、毎年指定された期日までに第1次考課者に提出する。記入にあたっては、考課対象期間における教育、研究、診療等の領域における実績を自己申請する。
10.自己評価シートの記入について
被考課者は各自「自己評価シート」を記入し、指定された期日までに第1次考課者へ提出する。記入にあたっては、各考課要素の着眼点等および評価基準に基づき、各項目について5段階で評価を行う。自己評価欄のコメント欄、組織や大学への要望等欄の自由記入欄は、必要に応じて適宜記入する。
11.人事考課表の記入について
(1)第1次考課者は、被考課者が作成した「目標シート」、「実績表」や「自己評価シート」を参考にしながら、被考課者と面談を行い、各考課要素の着眼点等および評価基準に基づき、各項目について5段階で評価を行う。なお、考課は原則として絶対考課とする。
(2)考課表の考課におけるコメントは、被考課者の「目標シート」、「実績表」、「自己評価シート」や面談を参考にしながら、第1次考課者が適宜記入する。
(3)考課対象期間内に異動や配置転換があった場合は、前所属の考課者の意見を聴取して考課を行う。
12.考課者の心得
考課者は、考課にあたっては教員の考課が自己にとって重要な職務であることを認識し、日常の職務行動を通じて、各人の能力を十分に発揮させるよう処置を講じるとともに、公平な考課を心がけなければならない。
13.出向・休職者の評価について
被考課者が考課期間中に出向・休職で大学を離れた場合、その期間も考課対象期間に含める。
(1)考課期間中に出向・休職の期間を含む被考課者(出向・休職中の者も含む)は第1次考課者と協議のうえ可能な範囲で所定の書類を作成し、指定された期日までに第1次考課者へ提出する。
(2)書類を受け取った第1次考課者は、考課期間中に出向・休職の期間が含まれることを踏まえたうえで考課を行う。なお、考課時に出向・休職中の者も中間および最終評価の面談を実施する。考課時に面談を実施することが困難と思われる場合は、出向・休職の期間に入る時点で事前に面談を実施し、考課は提出された書類をもとに行う。
14.フィードバック
(1)第2次考課者から第1次考課者への所属教員の考課結果をフィードバックし、次に第1次考課者から各教員へフィードバックする。
(2)第1次考課者は、フィードバックの際、特に自己評価と考課結果の差異の大きい者、D、Eランクとなった者へは留意して指導、助言を与える。
15.考課によるランクの決定
考課年の第2次考課に基づき、各領域の得点は、各領域のウエイト×評価(=評価点)×配分率として算出する。それぞれの領域の得点を合算したものを総合評価点とし、次のとおりランクづけをする。
16.考課結果の処遇への反映
[顕賞]
(1) 人事考課にてランクAの者もしくは上位10%以内の者を目安として顕賞する。
(2) その他